《4/1 エイプリルフールなのであえて嘘つかないよ企画》


4/1にブログで開催したフリーリクエスト祭りのログです。
リクエストSSはリクエスト主の方のみお持ち帰り可となっております。


《幻獣パロ・ジェクトとティナ》(1:00)

 わたしはふつうの半分のいのちです。
 わたしはずっとそう思ってた。

 わたしのお母さんは人間の女の人で、お父さんは皆と同じ幻獣でした。そして、その間に生まれた私は、半魂の娘です。半分しか幻獣ではないから、この場所ではずっとはんぶんの子でしかない。そんな風に思っていました。
 遠い昔にこの世界が人間たちの世界と近かったころには、たくさんの人たちが二つの世界を往来していたのだとか。ですが、わたしが生まれたころにはもう二つの世界は裂けてしまっていました。わたしたちの声を聞くことのできる人間の血は絶えてしまった。夢で、この世界ともう一つの世界をつないでくれる人もいない。だからわたしはずっと半分。そんな風に思っていたのです。

 わたしには爪が無い。牙もなく羽もなく、また、海を泳げるひれもなければうろこも無い。わたしは、自分がはずかしかった。半分の自分が。だからいつも隠れていました。誰もいない場所を探して。闇と光のあわいへ。誰もいないところへ。誰もいないところへ。

 そこで、わたしは、あの人と出会ったのです。

「なんだ、久しぶりに可愛いお嬢ちゃんに会ったと思ったら…… あんた、人間か?」
「久しぶりだなぁ、懐かしい匂いだ」
「ほんとうに、懐かしい……」

 あの人は、幻獣です。海のにおいがしました。鼓動は打ち付ける波の音でした。なのにわたしが懐かしいという。おかしなひと。おかしな幻獣。

「あァ、このあたりじゃあ知らねえか。俺らの頃合にゃ、人が幻獣に成るってことが普通にあったのさ。正確にゃ若干違うがね。俺様はそのくちよ。生まれは人間だ」
「だがね、やりたいことがあった。そのためにこの体になって…… もうどんだけ経ったかね。憶えてねえや。しっかし、人間だったころのことなんざ、久しぶりに思い出したぜ」
「懐かしいなあ、こんな手でよ、こんな目で、髪で」
「…こんなやつらが、いたよなあ」

 わたしは、びっくりしました。人間の体で生まれて幻獣になるという。人間だったというのはどんな気持ちだったのですかと聞いたら、あの人はくすぐったそうに笑いました。

「なってみないと分からねえよ。こっちだって、なってみなきゃ分かんないことのほうが多かったんだ」
「でもまぁ、そう悪くはなかったな。愉快なこともたくさんあった」
「なんだお嬢ちゃん、あんたは、人間だろう?」

 分からないのです。
 わたしは人間を知りません。わたしは半分の子。できそこないの夢。でも、あの人はわたしのそんな話を、静かに聞いてくれました。それから手を伸ばして私の髪を撫でてくれました。白く洗われた貝に覆われたような、潮の匂いのする手で。

「逆だろ、お嬢ちゃん。お前は”はんぶん”なんじゃないんだ。”双つ分”なんだ」
「幻獣は、夢を生きる。だが人間は夢を見る。その二つがどっちも分かるってのは凄いことだぜ? 普通の倍だ。お得な生まれつきじゃねえか。誰にでも自慢できるぜ」
「どっちにでもなれる。すごいことだ。俺は人間から幻獣になったんだ。保障してやるぜ。普通の二倍も面白い。どっちも分かる。そういう生き方をするやつが、昔は、二つの世界をつないでたんだ」
「あぁ、そんなにぼろぼろ泣くんじゃねえよ。情がわくだろ」
「情か」
「ンなもん沸いたのは、どんくらいぶりかなあ」

 人間は、自分の未熟さに泣くのだそうです。そして変わっていくことができるのだそうです。変われないときでも、知らない場所に焦がれて夢を見るのだそうです。それは、どんな生き方なのでしょうか。人はそれぞれ違う夢を見るという。知らない夢を見る人と、一緒に生きるというのは、どんなことなのでしょうか。
 わたしはまだ知らない。でもときどき、知らない場所を思う事があります。あの人はこれが夢だという。わたしはどこへ行くのでしょうか。わたしが、半分の子じゃなくなる日がそのうち来るのでしょうか。

 でも今はまだ時間じゃない。わたしは今も、まどろみの中に違うところを思います。夢を見ます。あの人の隣で。ふたり、朝を待ちます。潮騒を待っています。焦がれる想いがいつか世界をつなぐのでしょうか。わたしは今こんなにも、人間(あなた)に会いたいですから。あの人とふたりで。


《リストランテコスモス・某ホテルオーナーの一日のお仕事》(0:38)
 
 O・ヘンリーの短編小説で、”アルカディアの短期滞在客”というものがある。
 単なる暇つぶしで読んだ本に入っていただけだったが、ストーリーではなく、舞台立てのほうが彼の記憶のどこかに残った。アルカディア。猥雑な都会の中にひっそりと佇む幻影のような場所。時間の流れから切り離された所、宝石人形を躍らせるための宝石箱。
 面白いじゃないか。
 ならば、都会の一角に、そんな場所を再現してみるのもいい。無論実際に勝負に持ち込むのなら負けるつもりなど毛頭ないのが彼の流儀だ。けれど楽しみはまた別に。そう、最終的には自分の思惑を通さなければ、勝負をする意味などないのだから。

「寝心地は如何だったかな、レディ?」
「あら、ごきげんよう。オーナー直々のおいでとはご苦労様。なかなかようござんすね。まぁ70点というところかしら」
「……。それは身に余る光栄、とでも答えるべきだろうかな」
「いえいえ、頑張ったとは思いますわ。いまどき新設のシティリゾートで本式のアール・デコスタイルの内装、しかも当時のニューヨーク風といったら中々出来ることじゃございませんものね。何しろマニアックだからごまかしが効かないし」
「ずいぶんと特定をかけてくるのだな」
「ええもう、ずいぶんとマニアックな舞台装置ですもの」
「左様、このホテルのコンセプトはベル・エポックのアメリカのシティホテル、というものだ。機能的でありながら優雅で気品がある。それでいてただ様式に拘る大陸式とも違う」
「ようするにサルマネのハリボテということですわね。まぁわたくしあまり新大陸のホテルというのには良い思い出がないのですけれど、なんでそれをさらに模倣しようなんて思うのかしら?」
「……」
「サービスは悪くございません。でも、いまどきのホテルマンに当時のホテリアのサービスを求めるというのが酷なんじゃございませんかしら。正直、こちらに滞在するのなら、他のちゃんとしたリゾートにお邪魔したほうがよい気もいたしますわ」
「…………」
「ほほほ、わたくしにしてはずいぶんと親切なアドバイスをしてしまいましたわねぇ。もちろん、自分なりの評価はまた別でしてよ? あと朝食は美味しゅうございましたわ。サービスをしてくれたボーイさんも中々よろしい」
「なるほど、参考にしておこう」
「また参りますわ。私と違って、優しい心をもった友人がおりますの。彼女だったらきっとコチラのベットでもぐっすりと眠れるかと。では、ごきげんよう。オーナー、またのご縁に」

 ……いくら理想を持って働いていても、彼の仕事は接客業である。どこまでもどこまでもお客様は神様なのだ。神様は、皇帝よりも偉いのだ。
 ぐったりと疲れて思い切り不機嫌になって部屋に戻ると、サービスを頼んでおいたらしいティータイムのカートをボーイが運んでくる。手つきは迷いなく確かだったがこちらの様子を伺うような表情がまだどこか初々しい。これは誰だったか、と思うと、こちらを見ていた金色の目がびくりと驚いた。
 ……ああこれはたしか。
 ……誰だっけ。
「そなた、何者だ」
「フリオニールです。…スイート付きで勤務させていただいています」
 何かその、と彼は口ごもる。ふとこちらの様子を伺う目つき。彼は思い出した。あの小憎たらしい女が何かいっていなかったか。なかなか悪くなかった?
「あの、お、オーナー?」
 手をのばし顎を掴み、しげしげと顔を覗き込む。悪くはなかった。同時になんだかむかっ腹もたっていた。悪くない、だって? 具体的にはどこがだ?
「フリオニールか」
「は、はい」
「憶えておくぞ」

 ―――而して、その《悪くはない》が彼の精神に再び自業自得のカウンターをかましてくるという風に事の顛末は運ぶのだが、それはまた、別のお話。

 (コメント:マティかわいそす、かっこわらい(´・ω・`))

《学パロ”コスモス寮”でスコとばっちゅの携帯事情》(0:04)

《タイトル:起きてる? 本文:スコール起きてる?》
《タイトル:re:起きてる? 本文:おきてるが なんだよ》
《タイトル:re:re:起きてる? 本文:なんかNHK教育でシルバーアクセの番組やってる》
《タイトル:re:re:re:起きてる? 本文:そうか》
《タイトル:冷たいなぁもう☆ 本文:ビデオ撮っとこーかー》
《タイトル:re:冷たいなぁもう☆ 本文:うん》
《タイトル:感謝しろ! 本文:》
《タイトル:re:感謝しろ 本文:ありがとう》
《タイトル:∩(´∀`)∩ワァイ♪ 本文:》
《タイトル:re:∩(´∀`)∩ワァイ♪ 本文:おいバッツ、ベットの下開いてるぞ》

 送信して、しばらく、返事が無かった。予想通りだったからスコールは携帯電話の蓋を閉じて充電器に突っ込んでおく。やがて階下から、とんとんとん、と足音が上ってきた。最初からそのつもりだったんじゃないかと、思わず、苦笑めいたものがこぼれる。
「(面倒くさいやつ)」
 メールというものは、往々にして書かれていることとは関係の無い部分が本題だったりする… つまりは、そういうお話。


 コメント:スコールは基本メールは投げっぱなし


《遊戯王×DFF》(18:20)

「よっ、カイザー」
「よう、カイザー」
「(……なんの嫌味だ、それは) 二人とも何の用だ、こんな時間に」
「んーん? いや、スコールのカッコいい姿を見に来たの。明日が待ちきれないと思ってさー」
「それで、オレがブルー寮の鍵をちょちょいっとね」
「お前ら……」
「そんな顔すんなよ、スコール! もっとよく見せて。似合うなぁ、白服」
「見るな」
「明日になれば皆にお披露目になるくせに」
「……煩い」
「襲名デュエルだろ。みんな言ってるよ、誰が相手に指名されるんだろうなぁって。やっぱりクラウド? それともセシル? でも大変だぞー、せっかくライトさんの次なんだから、カッコいいとこ見せないと」
「……」
「ンだよ、その顔。ほら、もっと笑って?」
「もう帰れ」
「え、ちょ」
「どうせ明日、嫌になるほど見られる」
「おーい、ちょっとー、ひどいよー。なんでだよー」
「はいはいバッツ、もう帰ろ。どうやら今なんかナイーブになってるみたいだから。なぁ、新しい《カイザー》?」
「……」
「ちょ、お前らなんで目で分かり合ってんの!? スコールのばかー。くそっ、また明日な!!」

「(こいつは、明日のデュエルはバッツで決まりだね)」
「なぁジタン、なんでスコールあんな怒ってんの」
「怒ってんじゃないだろ」
「?」
「伝説を背負う人間には、それ相応のプレッシャーがかかるってこと、改めてかみ締めてるんだろ」
「……デュエルにはそんなん関係ないだろ、なぁ?」
「百点満点でバッツらしいお答え、どうもありがとう。どうせ言うと思ってたよ」

「(レッド寮の落ちこぼれバーサス、ブルー寮の新生カイザー、ね…… 伝説の再現ってか?)」

コメント:どこのガッチャですかこのバッツ…


《ちょっと病んだフリセシ》(18:10)

 暗い鉄(ち)の臭いがする。
 セシルは、狼の毛並みのような、剛い髪を梳きながら、そう思う。フリオニールの髪はろくに手入れもされないままに伸ばされていて、こうやって水ですすいだ後に触れると、脱脂のされないままの何かの毛並みを撫でているような心地がする。目を閉じた青年のうなじ。硬く日焼けした肌の感覚。
 肩から背中にかけての、鋼をよりあわせたように鍛え抜かれた線。弓を引く腕のしなやかさ。その全てが目の前に無防備にさらされている。セシルは銀灰色の髪を布でていねいにぬぐってやる。白い指先が浅黒い膚をかすめる。
「セシル」
「何だい?」
「……もういいよ。自分で出来る」
「いいんだよ。余計なことを気にするんじゃない」
 セシルはなれた手つきで銀灰色の髪を分け、一房だけ長く伸ばされた髪をえり分ける。さっきまで、とセシルは思う。返り血を吸い込み、ぐっしょりと黒く濡れていたその髪。今はすべてを洗い落としひとかけらの汚れも無い。なのに深く深く染み付いたその臭いは、消えない。
「背中の汚れは自分だと分からないだろう?」
 ぜんぶ落とした。そう思う。なのに、どうして臭いが消えないのだろう。それともこれは錯覚なのだろうか。返り血にまみれ、修羅のような姿で敵を狩り立てるフリオニールの姿を背後から見つめていたから、そんな錯覚が染み付いてしまったのか。
「もったいないからね。きれいな髪だ」
「……あんたが、言うのか」
 フリオニールはふいに振り返る。戸惑うような金色の目が上目遣いにセシルを見上げていた。ふいに手がのばされ、肩口にふわふわともつれていた真珠色の髪をすくう。ぎこちなく指に絡め、そして、ふと立ち上がると、その髪の一房にくちづける。無骨ではあってもためらいのない動作だった。
「血まみれなのは、俺だけでいい、セシル」
「……」
「あんたはきれいだから。俺が守るよ。もう、あんたを汚したりしたくない」
 セシルはなぜだか、泣きたくなった。だから微笑んだまま手を伸ばした。フリオニールの目を閉じさせた。
「……ありがとう。優しいね、君は」
 可哀想なフリオニール。まだ君の心は無垢なままなのに、君の優しさには、ぬぐいがたい血の臭いがしみついてしまっている。セシルはフリオニールのまぶたの上にそっと口付ける。浅黒い肌。その奥を流れる血潮の感覚。そして暗い鉄の臭い。

 どうしてなんだろうね、フリオニール?
 君はそんなにまっすぐな目をして生まれついたのに、君の周りの世界は、それにふさわしいきれいさを一つも持っていなかったなんて、いったい、どういう悪い冗談なんだろうね?



《混沌陣営で警察モノ》(14:52)

 呼ばれた店に行ってみると、もうさっさと銀バエ(マスコミ)どもが集まってやがる。やれやれ最近のハエっつうのはどうしてこんなに素早いのかね。ネットってやつのせいか。中にはジーパンにパーカー姿でパソコン片手のガキまでいやがる。俺様がこんな窮屈な背広なんざ着させられてるっつうのに気楽に私服で仕事なんざしてんじゃねえよ。ええい最近の若いもんは。
「おい、どけ! ……ゴルベーザ!」
「ジェクトか? ずいぶん早いな」
「”お仕事めぐり”の途中だったもんでな」
 鑑識の連中が張り巡らせたテープを乗り越えようとして、うっかり踏んづけちまう。おっとすまないね。窮屈な背広姿が俺と違って喪服みたいにバッチリ決まった不吉な男がひとり、いくつもチョークで線が引かれた床に膝を突いていた。後ろから覗き込む。……こりゃひでえな、おい。
「ええと、アレか、スパゲティナポリタンか」
「不謹慎な冗談は止めろ」
「へいへい」
 世も末だね。少なくとも、俺の《お仕事》の相手はこんな風にお行儀悪く《ごはん》を散らかしたりはしないもんだが。いい加減連中の仕事も汚いとはいえ、さすがに親分連中がガキどもの手綱には気をつけている。こりゃ、はぐれもんの仕業だろう。しかし、ここまでスプラッタな遊び方をするったあ、どんな奴の仕業なんだか。
「目撃者は?」
「カメラが壊されていた。映像は今ミシアにまわしている」
「素早いねえ」
「……これだけの騒ぎだからな」
 ゴルベーザは顔をしかめ、胃でも痛いのを我慢しているような顔になる。相変わらず損な野郎だ。自分がはらわたひきずりだされたところでも想像して気持ち悪くなってんだろう。
「お疲れさん。なんだ、その……後でうどんでも食いにいくか」
 そう言った瞬間、ぽこん、と頭を叩かれた。
「あ痛」
「なにが《うどん》じゃ。このたわけ。貴様の辞書には《でりかしー》という言葉はないのか」
「雲?」
「すまんのゴルベーザ。ちと気になるものが見つかった。こちらに来い」
「気になるもの? おい、ジェクト」
「おうよ」
「貴様もか。暑苦しい」
 《雲》はぼやく。だが、ベテランのはずの《雲》の表情が晴れない。何があった? 俺は、ゴルベーザの後に続くように、立ち上がった。
 (ここまで)