GX舞台袖劇場 《アンデルセン酔い》
(ギャグ)

登場キャラクター:ユベル・十代・ヨハン・ジム
舞台:布団が一組中央に敷かれている。水、洗面器、その他二日酔いの朝に必要なものもろもろ。

ユベル、二日酔いらしいげんなりした顔で寝込んでいる。隣には心配そうな顔の十代。

十代:「ユベルー、水、持ってきたぜ。ちょっと飲む?」
ユベル:《…ありがとう、十代…》
十代:「あと、洗面器」
ユベル:《君のその必要以上に丁寧すぎる対応、涙が出るくらい嬉しいよ!》(ヤケ)
十代:「でも、なんでそんなんなっちゃったわけ? なんかヘンなもんでも食ったのか?」
ユベル:《あいつのせいだ…》
十代:「へ??」
ユベル:《あいつ! 十代にやたらとひっついてるあいつ! なんか緑の髪のやつだよ!!》
十代:「え、ヨハン? ヨハンがどうしたんだよ?」
ユベル:《十代、キミなら知ってるよね。僕はキミに会うために、いろんな人間を渡り歩いてきた…》
十代:「(そうやって四方八方で大迷惑を引き起こしてたわけだけど…)」
ユベル:《原料は心の闇、というか、いろいろだったんだけど、まあ、あのマッチョとチビはまだよかったんだ。普通に飲み口マイルドというか、特に特別でもなんでもないって感じで。それなりに元気を出す役にはたったんだけど》
十代:「…あのさユベル、いちおうコブラ先生もマルタンも人間だったんだからさ、そういう食料扱いってどうなんだよ…」
ユベル:《だって、ほんとに僕の食べ物って心の闇なんだもん。それはいいとして、あいつだよ! ヨハン!》
十代:「ヨハン… そういや気になってたんだけど、ヨハンの”心の闇”ってなんだったんだ?」
ユベル:《わかんなかった》
十代:「は?」
ユベル:《あいつに取り付いたらね、なんていうかこう、パーッと気持ちが盛り上がって、すごく楽しい気分になって、なんかやろうと思ったらなんでも出来るような気持ちになってきてね》
十代:「…それで?」
ユベル:《こう愛を語ってみたり、泣いたり笑ったり、とりあえず殴りあいしてみたり。すごく楽しかった》
十代:「だったら、よかったんじゃないか? お前とヨハンって相性がよかったってことじゃないのか」
ユベル:《…一瞬でもそう誤解した僕がバカだった》
十代:「よく、わかんねえ、ユベル」
ユベル:《十代は未成年だからまだ分からないよね…(遠い眼) 僕はねえ、ようするに、世間様での年末年度末とかに、頭にネクタイ巻いて新橋あたりをうろついてるお父さんたちとおんなじ状態だったの!!》
十代:「え? なんだそれ、つまりあれ… 酔っ払い?」
ユベル:《そう! 僕はあいつのせいで、思いっきり悪酔いしたの!! …う"》
十代:「あーほら、興奮すんなよー。調子悪いんだからー」
ユベル:《ぎもぢわるい…》
十代:「へー、そっかー、でも、そういやお前本人と、ヨハン入りの状態って、なんか印象違ってたからなー。あれって悪酔いだったのかー」
ユベル:《テンションあがるし、元気になると思って、ガンガンあいつを使ってた僕が間違ってた… ちょっと見た目がいいからって騙されたらこういう眼にあうんだ… 十代、あいつ、絶ッ対になんかのトラップだよ》
 *そこに、フライパンを持ってヨハン登場。後ろからとめようとするジムを半ば引きずっている。
ヨハン:「おい、そこのヤンデレ! ちょっとこっちが黙ってると思ったらなぁ、なに言ってんだよ、何を!!」
ユベル:《うわ、来た…》
ヨハン:「その、”すごくいらない子が来た”みたいな顔すんなよ! 被害者はどっちだと思ってんだよ、どっちだと!」
ジム:「ヨハン、Cool down!おちつけ!どーうどう!!」
ユベル:《だって、お前、最悪だったんだもん。一口飲んだら美味しそうな顔してて、そのせいで一気にいったらフラフラガンガンだもん。お前のせいで僕、十代にどれだけ恥かしいこと言っちゃったと思ってるんだよ》
ヨハン:「オレもだそれは! なんでオレがあんなハードゲイみてーなナリで愛とかなんとか語らないといけなかったんだよ! 一生の恥だぜ!?」
ユベル:《僕のせいだけじゃないよ! あれはお前の資質だよ!!》
 ヨハン、無言でフライパンを持ち上げて、麺棒でガンガンぶったたく。
ユベル:《やめてぇぇぇ… 響くぅぅぅ…!!》
十代:「よ、ヨハン! ちょっとやめてそれはやめてやってくれ! 真面目に調子悪いんだからこいつ!!」
ヨハン:「やっかましい! よくも人のせいにしやがったなぁ!? こうなったら、テキトーなやつふんづかまえて、オレのせいじゃないって証明するぞ!?」
ジム:「何をする気だ、お前は!」
ヨハン:「”はめつのひかり”とか、”だーくねす”とか、そういうのもオレにくっついたらハイテンションになるか、試すんだよ! そしたらオレのせいじゃないって分かるだろ!」
十代・ジム・ユベル:「「《被害を拡大するなー!!》」」
ジム:「ちょ… ちょっと落ち着こう、ヨハン。こっち来い。アメちゃんあげるから。な?」
ヨハン:(フー!)(威嚇)
ジム:「よーしいい子だ、どうどうどう。こっちおいでー、こっちー」
 ジム・ヨハンを羽交い絞めにして退場。後には頭をかかえているユベルと、その横で正座している十代が残される。
十代:「…ヨハンって、なんつうか、見境なくなると怖いよなぁ」
ユベル:《じゅうだいー、じゅうだいー…》
十代:「どうした? 大丈夫か?」
ユベル:《頭痛いよー、きもちわるいよー、頭痛いよー、きもちわるいよー(半泣き)》
十代:「あーはいはい、水飲んで。ちゃんと寝て。おでこ冷やす? ちょっと気持ち楽になるかもしれないし」
ユベル:《うー…》
十代:「まあ… あれだ。今度からは飲みすぎには注意しような。な?」
ユベル:《うん… ううううう……》
 ユベルの半泣きのうめき声。暗転。



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