【GXメールゲーム!】
TUAN-0 クローズド・サークル!


  【クローズド・サークル】
 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クローズド・サークル(closed circle)はミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来、連絡が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』が代表例。
過去の代表例から、「吹雪の山荘もの」「嵐の孤島もの」の様にも呼ばれるが、上記クリスティの「〜いなくなった」は実は嵐によって隔絶したシチュエーションではなかった。







 1:男子脱衣室

「なるほど」
 ぱたん、と閉じた薄いノベルの表紙を軽くなでながら、エド・フェニックスは感慨深くつぶやいた。
 エドは、世間様でいうところの、所謂【人気プロデュエリスト】だ。
 16歳という若輩、逆境に継ぐ逆境というドラマチックな人生、それに負けることのない勝気さと精神的な強さ、さらに言うならその美貌と年齢…… というものも、【人気】というあたりには欠かせないであろう。エドと同じ立場に置かれたなら、純粋に自分の腕だけを評価されているわけではないと忸怩たる思いを抱くようなものもいるだろう。だが、そんなことを考えるのは逆に弱い人間の証拠だ、とエドならば一刀両断に切って棄てる。
 自分の手持ちの札は、たとえそれがどんなに不本意なものであっても、利用できるだけするべきだ。無論、めぐまれた手札におごっているような人間は、相手のトラップやエフェクトで痛い目をみることになる。常に用意周到であり、同時に、あくまでしなやかに、したたかに生きること。それがエドの生き方である。
 そう…… 利用できるものは利用するべき。
 そう考えるとこのシチュエーションも、いわゆる、【クローズド・サークル】として利用されることも、分からないではない、とエドは考えた。
 考えようとしてみた。
 どう考えても無理だった。
「おい、エドくん〜? 着替え終わったかい?」
「まだです!!」
「そぉ……」
 外からなんだかひどく残念そうな声が聞こえてきて、エドは、いよいよ自分に逃げ場が無いということを悟らざるを得ない。
 場所は、アカデミア付属の天然大温泉の一室である。もっと正確に言うなら、その脱衣所にある個室の化粧室である。
 エドの手札は自分の着ている服と、いつも手放さないデッキ… それと読みかけだったクリスティの推理小説。それだけ。携帯電話すらない。というよりも、アカデミアの中では、衛星携帯以外の携帯電話は使用不可能なのだ。
「はやく脱いじゃえ、脱いじゃえ♪」
 外から声がする。どうやら、ドアのあたりに張り付いているらしい。なんであなたはそんなにヒマなんですか。留年したからですか。あなた、亮と同い年でしょう。そして、男の裸なんて見て、何が楽しいんですか。
「あー、思い出すなぁ、一年だったころ」
 まるでエドの考えを読んだかのように、しみじみと声がする。
「亮がねぇ、こう、はじらいもせずにいっぱつですっぽんぽんになっちゃってねえ〜。脱がす楽しみが無くって絶望したよ、僕は! あんなかったい性格だったら、ひとつやふたつはためらってくれると思ってたのに!」
「この変態が」
「ん? なんか言った?」
「なんでもないです」
 ―――運命力が足らなさ過ぎる、とエドは絶望に満ちた頭の中で思った。
 絶体絶命の状況は、簡単には解決しそうにない。








 2:大浴場

 かっぽーん、とどこからともなく音が聞こえた。
 視界にはもうもうと湯気がたちこめ、視界はいいとは言いがたい。外との気温差があるせいだろう。はるか頭上にはこの大浴場の天井であるところのガラス張りのドーム屋根がみえるが、今はその向こうは暗かった。どうやら、台風が近づいているらしい。外では風が吼え、嵐がおおきな身体でこちらへとのしかかろうとしていたが、分厚いガラスを隔てられたこちらでは、さして何が起こるというわけでもない。ぬるい風呂をたのしげにばしゃばしゃと泳いでいた翔は、ふと泳ぐのをやめて、不思議そうに脱衣所との出入り口のほうをみる。
「エドも、吹雪さんも、なかなか出てこないっすね」
「何モメてるんだろうなぁ?」
 こちらはのんびりと湯につかっていたヨハンも、翔の言葉にふりかえり、首をかしげる。
 季候のせいか、大浴場には人もまばらだ。25mプールが軽くひとつふたつは入ってしまいそうな巨大浴場は、このアカデミアにはありがちな謎のオーバースペックを誇っている。ホンモノの椰子の木がホンモノの椰子の実をつけていて、その下には【椰子の実落下注意!】の看板がついている。
(…そんなこと書くくらいだったら造花にすればよかったのに)
 そう思う翔のほうが常識的だ。だが、常識的な人間がえてしてスカを引くというのが、この学校の常識である。
「ところで、ヨハンは何をやってるんっすか? さっきから……」
「えー、鞭を作る材料がほしいと思って」
「!?」
 鞭!? よりにもよって鞭!?
「白樺の枝が普通なんだけど、こんだけ熱いと白樺なんて生えてなくってさー。でも、椰子の木はやだよなー。トゲトゲがあって痛そうだし」
 肩までお湯に使ってのんびりしているヨハンは、首から上だけだと美少女に見えた。声も、澄んできれいなアルトだった。(声変わりしそこなった、と言われるとヨハンは一番怒る) だが、そこから下はいかにも人種が違うらしく、腕も胸もがっしりとした筋肉に覆われている。日本人の感覚だとたまに不釣合いにみえて混乱しないことも無い。
 だがしかし、そのヨハンが、よりにもよって鞭である。
「それ… なんのプレイっすか」
「は? プレイ?」
 ヨハンは盛大に顔をしかめた。美少年が台無しになる。
「なにかんがえてるんだよ。お前、ヘルカイザーの弟だったよな。やっぱSM好きだったのか?」
「ちっがう!! だいたい、兄さんは別にSMフェチじゃないっすよ!」
「ふーん」
「ヨハンこそ鞭なんて何に使う気なんっすか」
「だってほら、風呂といえばムチ」
「ぜんぜん分かんないっすよ!!」
 ヨハンは憮然とした顔になって、右や左を見回した。誰か、自分の代わりに説明をしてくれる人を探そうと思ったのだろう。翔がざくりと釘を刺す。
「いいけど、大浴場にいるの、今はボクたちだけっすからね。誰も助けてくれないっすから」
「ちぇっ」
 頼る気満々だったのか。
 自分でできるくせにやらない子。じとめで翔ににらまれて、ヨハンは、はあ、とため息をついた。
「あのな、オレの郷里だと、こういうお湯の風呂って無いの。かわりに、サウナのついてる家がすごく多いんだ」
「サウナ…… っすか?」
「そ。アークティックにもあったけど、こう、真ん中にサウナストーンっていうでかい石があって、それに水をばっちゃーとぶっかけて、すんごく部屋を熱くする」
「…それから?」
「それから、身体があったまったら裸で外に出て、雪の中をゴロゴロ転げまわる。真冬とかだと気温は−10℃以下がフツー」
「……」
「そのあと、最後に自分や周りの人の身体を、白樺の枝をたばねてつくったムチでひっぱたきあう。そのあとまたサウナにはいって何回か繰り返す。そしたら血行がよくなって頭がすっきりするんだ」
 翔は、こころからうろんなものを見る目で、ヨハンを見た。その目つきに何を思ったのか、ヨハンは「なんだよー」と口を尖らせる。
「言っとくけどなあ、日本人だって似たようなもんだろ! わざわざ全裸で外に出て景色をながめる習慣があるとかって、とんでもねえ」
「そういう変な言い方しないでくださいっすよ! 国ぐるみでヘンタイのキミに言われたくないっす!」
「ンだっとお!? サウナの何が悪いんだよ!」
「変態、ど変態、ディ・モールト変態!」
 しばらく二人はぎりぎりとにらみ合い、そしてまもなく、誰もいない風呂場全体に、ばしゃんばしゃんという盛大な水音がひびきはじめた。







 
 3:休憩室

 イ゛ェアアアア! イ゛ェアアアア ! イ゛ェアアアア !!
「剣山、オレは、さっきから思ってるんだがなっ…!!」
「何ざうるす!?」
 イ゛ェアアアア イ゛ェアアアア イ゛ェアアアア イ゛ェアアアア イ゛ェアアアア イ゛ェアアアア !!
「なんでここの休憩室には、こんっな、変なゲームしかないんだッ!?」
「じゃあ、オレのチーターマンと代わるザウルス!?」
「大差ないだろうが、どっちもクソゲーだっ」
 とうとう怒りがどこかのリミッターをやぶったのか、万丈目は「こんちくしょう!」と怒鳴るなり、コントローラーをクッションに向かって投げつけた。びよーん、と伸びるコンセントコード。背中合わせに座っている剣山は、やっぱり、どう見ても8ビット以上の能力を持っているとは思えないゲームと格闘していた。部屋を見回しても筐体はせいぜい5つ6つ。その中身がどれもこれもレトロゲーム、というよりも、ただのキワモノばかり… となると、やっていられない気持ちにもなるというものだ。放り込んだ100円は帰ってこない。万丈目はカリカリしながら古いソファへと乱暴に座り込む。
 どすん!
「この、この〜、ザウルス! …ああっもうなんで見えない敵に当たり判定があるドン!?」
「なんだってこんなへっぽこなもんしかないんだ、ここの風呂は…」
 あまり広いとはいえない休憩室に、電源のささりっぱなしのアーケードゲーム数台から、ピコピコという電子音楽が流れ続けている。剣山のプレイしているゲームは内容はひどいくせにBGMだけは変にスタイリッシュだ。万丈目はあきらめのため息をついて、ちかくの自販機までコーヒー牛乳を買いに行く。
 窓の外には嵐。轟々と吹き渡り、窓を雨のつぶてが打つ音は、まるで小石がぶつかっているようだ。だが、おんぼろ休憩室の中は暖房がきいてあたたかく乾燥している。居心地は、悪くは無い。
 ―――まあ、クソゲーも悪くないか。いつもデュエル漬けじゃあ、脳みそがウニになっちまう。
 十代だったらとうてい同意してくれなさそうなことを考えて、万丈目は、ぱきんとコーヒー牛乳のふたをあけた。
 なんだか知ったような顔が、まとめて大浴場に集まっている。ひとえに、これもこのひどい台風のせいだった。
 波の穏やかな南洋に浮かぶデュエルアカデミアは、基本的には天候に恵まれた環境の下にある場所だ。
 活火山であるはずの山もいままで数十年単位で被害を出すような火山活動をおこしたことがなく、季節の変化もごくゆるかかなもの。梅雨もみじかくあっさりとしたもので、あつい真夏も乾燥していてすごしやすい。だが、問題がひとつだけあった。
 この場所は、往々にして、とんでもないサイズの台風に、直撃されるのだ。
 そうなってしまうと、海路にたよりきっているアカデミアは弱い。海路を立たれ、電気をやられてしまうと、もう、できることは何も無い。強いて言えば地熱で動いているから稼動に問題のない温泉にいって汗でもながすくらいしかない。そうして今回も、アカデミアは、年に何回も繰り返すパターンとまったく同じ道を進んでいる。
 …エドあたりはさぞかしイライラしてるだろう。
 無い暇をしぼりだしてアカデミアにきたと思えば、天候の問題で缶詰だ。あの完璧主義者はさぞかし怒っているだろう。いい気味だ、と思うよりも素直に同情のほうが勝つ気分。いやいやいや、と万丈目はプルプルと首を横に振る。なんでオレ様が他人のことなんぞ心配せにゃあかんのだ! そういうことはおせっかいの十代にでもまかせとけ!
 ガチャガチャとコントローラーと格闘していた剣山が、とうとう、「ぬわぁぁぁ!」と妙な叫びとともにゲームを放り出した。どうやらゲームオーバーになったらしい。万丈目はなげやりな口調で、「コーヒーでも飲め」と言った。
「ううっ… クソゲーに負けると、なんか、すっごい屈辱を感じるドン」
「そもそもなんでここはこういうクソゲー、というか、ネタゲーばっかりあるんだ」
 たけしの挑戦状だの平安京エイリアンだの、なんだの。せめてテトリスでもあればいいのに。
 剣山は、何かをあきらめたものだけのできる、慈愛に満ちた目で、万丈目を見た。
「万丈目センパイしらないドン? ここのゲームって、温泉の設備じゃないザウルス」
「えっ?」
「つまり、歴代のアカデミアの生徒が、寄付してったものドン」
「……」
 この学校の生徒にはアホしかいないのだろうか。
 思わず悩み出す万丈目に背を向けて、剣山は自販機にコインを入れる。チャリンとお金の落ちる音。ここの飲み物は一律百円なのだ。
「アカデミアにくるって時点で、たいていは電源付きのゲームはあんまり興味ないってやつが多いザウルス。そんなかで電源付きゲームが好きってやつは、そーとー濃い感じのゲーム好きばっかりってことじゃないドン?」
「つまり、一時間かけて煮出したトルココーヒーよりも濃厚なゲームオタクが、斜めの方向に暴走した結果がこのありさま、ってことか」
「万丈目センパイ、卒業するときに、マリオパーティーとかポップンでも寄付してくれたら、みんなが喜ぶドン」
「……」
 はたしてそれは空気が読めてないとかいうんだろうか。やっぱりネタにはしったほうがいいんだろうか。万丈目はちょっと悩んだ。悩んでいるという時点で自分も立派な【アカデミア体質】だということにはまだ気付いていない。
《まぁ、真面目なゲームはデュエルだけで足りているだろうし…》
 万丈目が斜めな方向の結論にたどりつこうとした、そのときだった。
 がしゃん、と音がした。
「剣山!?」
「グゥォオオオオァァァッ!!」
「なっ…!?」
 万丈目は度肝を抜かれる。だが、何かをいうよりもさきに、剣山の太い腕が《チーターマン》をつかみあげ、剣山めがけて投げつけてくる。金属とプラスチックが砕け散る音。とっさに後ろに転がり込んだ万丈目の前で、哀れ、《呪いの館》が木っ端微塵に砕け散った。
「ぎゃおぉぉぉおおぉん!!」
 何やら絶叫しながら走り出した剣山は、強靭な肩でドアを粉砕し、そのまま廊下へと走り出していく。万丈目は半ば呆然として、その後姿を見送った。
「な、なんなんだ、いきなり……?」
《アニキィ! これってキット電磁波よォ!》
「うおっ!?」
 いきなり目の前にあらわれる、見苦しいことこの上ない小動物。とっさにそこらへんに転がっていた8ビット機のコントローラーで叩き落すと、《キャア!》と悲鳴を上げて床に転がる。
「いきなりあらわれてっ、顔を寄せるな、顔をッ!!」
 だが、言ってすぐに、万丈目は何か異常なことが起こっていると気が付く。
《ひどいよォーアニキィー、オイラ、アニキが危ないって警告しにきたのにィー》
「おい、そこの黄色いクズ!」
《そ、その呼び方は酷いわよォ!》
「そうじゃなくって! お前、今これに」
 万丈目は、にぎりしめたままだったコントローラーを、おじゃまイエローへと付きつけた。おじゃまイエローは《キャア!》と声を上げる。
「これに、”触った”な!?」
《痛いってばぁ、やめて、やめてアニキー!》
 そんなはずがない。
 万丈目は呆然と思った。
 精霊は、基本、モノには”触れない”のだ。おかげで万丈目も半年近く、この見苦しい小動物が、自分の幻覚かなにかと思っていた。それが、プラスチックと金属のかたまりで叩き落せるだと? そんなバカな!
《どうするのアニキ!? なんか、変な音が聞こえるわよ?》
 だが、おじゃまイエローに耳元でキイキイわめかれて、万丈目は我に帰る。
 がしゃん、だとか、どかん、だとか――― モノが壊れる音?
「や、やばい」
 剣山が暴れているのだ!
 何が起こったのかはしらないが、止めないとまずい! 剣山は背こそそんなに高くないが、身体は筋肉の固まりだ。理性をなくして全力で暴れまわれば周りの被害は甚大だ。とにかくおいかけなければ!
「い、いくぞ、クズ!」
《わかった… キャア!?》
 むんず、とおじゃまイエローをわしづかみにした万丈目は、ぐいとばかりにコートのポケットに押し込んだ。そして万丈目は、嵐の音が響く廊下へと、全速力で飛び出した。







 4:旧食堂

「ジム、ジムっ! 開けろってば、ジム!!」
「グゥアォゥ!! ギャウウ!!」
「カーレーンっ! そこ退いてくれよぉ! あかねーだろー!!」
 ドンドンドンドン。ドカンドカン。ガコンガコン。その他もろもろ。
 一番最初にそこにたどり着いたのは、万丈目だった。血相をかえた十代が、顔を真っ赤にしながらドアをたたいている。いったいなんなんだ? 思わずそっちに話しかけようとした瞬間、万丈目の足が、なにか柔らかいものをグニッと踏みつけた。
《グリー!!》
「な、なんだっ!?」
「あ、相棒! まんじょうめぇー足足ーッ!!」
 万丈目があわてて足を退けると、足元で、バレーボールくらいのサイズの毛玉が眼をまわしている。万丈目はなかば呆然とする。あわてて毛玉を抱き上げて、ひっしで上下左右にゆすっている十代を見つめた。
「なんだ、そ、その、綿ボコリ」
「綿ボコリ違うッ!!」
 怒られた。
 呆然としている万丈目のポケットがなにやらうごうごしていたが、もう、何をしていいのかわからない。あまりに何もかもおかしなことが起こりすぎた。
 そのとき、頭上で何か、変な音がした。バチン、とかブチン、とか、何かの切れるような音。とたんに廊下の向こうまで続いた蛍光灯の列が明滅を初め、ひとつまたひとつ、ドミノ倒しのようなスピードで、次々と消えていく。
 廊下はまもなく闇に包まれる…… 足元の非常灯だけが残って、かろうじてモノのかたちが見える程度の視界になってしまう。何がおこったのだ? いったい、何が?
「おい、十代ッ!」
「万丈目くん、そこにいるのか!?」
 ふいに廊下の向こうから、それぞれ別に声が響いた。階段の上からばたばたと駆け下ってくる足音と、廊下の向こうから駆けつけてくる足音。そちらをみた十代が「ヨハン!?」と呼ぶのと、振り返った十代が吹雪のすがたを見つけるのがほぼ同時だった。
「……ぎゃあっ、ヨハン、なんだよその格好!?」
「悪ぃ! 風呂から飛び出してきたんだよ。ルビーに呼ばれたんだ」
「ちょ、ちょっと、万丈目、それ脱いでくれ。その黒いコート貸してくれっ」
「なんでオレが!?」
「オレのジャケット短いんだよ!」
 唖然、というよりも、あきれかえって声もない、という風のエドと、ヨハンの後ろでぜえはあと息を切らしている翔。その景色をみていた吹雪はしばらく眼を丸くしていたが、やがてしみじみと、「いい光景だねえ」と言った。
「とりあえず、ヨハンくんがセミヌードなのはおいといて、何があったんだい、万丈目くん?」
「わ、わかりません…… いきなり剣山が暴れ出して、それをおいかけてきた十代がここで大声で怒鳴ってて」
「それで、精霊が実体化して?」
 吹雪が言った瞬間、みんなが、いきなり黙り込んだ。
 自分の言った言葉の光景に眼をちょっと丸くして、「おや」と吹雪は言う。腕にかかえていたタオルのかたまりがもそもそとうごき、「みゅー」と鳴いた。万丈目は息を呑んだ。猫の声でも犬の声でもなかった。万丈目は震える指で吹雪の腕の中を指差す。
「し、師匠、なんですかそれ」
「……なるほど、僕だけじゃなかったのか」
「なんの話なんだよ、吹雪さん?」
「うん、それがねぇ」
 十代のといかけに、吹雪はため息をつく。そして、腕に抱いていたタオルのつつみをそっとひらいた―――


【TO BE CONTINUED!!】






【GXメールゲーム!】、イントロダクションです。
今回のシチュエーションだと、あきらかになったポイントは三つです。
まず、【クローズド・サークルの発生】、【精霊の実体化】、【剣山凶暴化】の三点から。
次回が本当の意味でのTUAN-1、【GXメールゲーム!】の第一回となります。
-――ちなみにこのメールゲームは、ニコ厨にやさしい作りとなっております。
すごく…… gdgdです……orz
とにかく、第一回ではもうちょっとゲーム的な説明などをいれたいと思っておりますので、どうぞよろしくおねがいします。それでは、この【GXメールゲーム!】にしばらくのお付き合いをよろしくおねがいします。




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