TUAN-1 密・室・殺・人! 1.旧食堂 ドアの向こうからはなおも、カレンが暴れているらしい騒ぎが聞こえてくる。最初に我に帰ったのは、十代だった。 「と、とにかく、なんかおかしいんだよ。ジムがあぶないかもしれない!」 「ドアを開けたいのか?」 「頼む!」 よっしゃ、と答えたヨハンは、しかし、ぐるりと周りを見回して、力がありそうなのが自分ひとりと気付いてなさけない表情になる。ここをぶちやぶるのに一人? 「安心しろ」 エドがごく冷静に言った。 「そのドア、引いてみろ」 「あ、開いた」と、十代。 あまりのお約束、といえばお約束っぷりに誰もが頭が痛くなる。が、それをやったら問題がひどくなるということに気付いていた人間が、この場にはひとりもいなかった。 十代は、ドアをあけた瞬間、のしかかってきた爬虫類の下敷きになり、「ぎゃあ!」と悲鳴を上げる。 「グワァァオォウ!!」 「うおっ、なんだこりゃ!」 《あ、あぶないわよォ! 暴れワニだわァ!!》 大暴れをしているカレンのせいでドアがあかなかったのだから、そこを開ければワニがこっちに向かって倒れこんでくるのは当たり前だ。カレンの体重はゆうに100kgを越える。十代がつぶれる! そう思って誰もが悲鳴をあげかけたとき、とっさに、鋭い声が響いた。 「レッドアイズ、ブラック・プチ・フレア!」 《みゃあ!》 グワァァオオゥゥ! 尻尾を焦がされたカレンは、文字通り飛び上がり、そのまま、全速力で逃げ出していく。オーストラリア・アリゲーターの全速力は時速60kmにも及ぶ。カレンがあっちにぶつかり、こっちにぶつかりしながら廊下の向こうへと逃げさっていくと、あとには、下敷きになって眼を回した十代だけが残された。 「あ、アニキぃ!」 「おい十代、しっかりしろ!」 あわてて、翔とヨハンとが十代に駆け寄る。駆け寄りそこねた万丈目、さらに、やや遠巻きにして呆然としていたエドは、なんとも困ったような顔でガリガリと頭をかいている吹雪のほうをみた。正確には、その吹雪の片腕に抱かれている、中型犬くらいの生き物を、だ。 頭が大きくて、なんだか幼い感じの体型をしている。身体は黒いガラスみたいにつやつやぴかぴかしている。吹雪が「よくやったねー」と頭を撫でてやると、《みゅう!》と鳴いて、得意げにポッと火を吐いた。なんだか紫を濃くしたような、黒に近い色の変な炎だった。 「し、し、師匠、それ、なんですか!?」 「……《黒龍の雛》?」 「エドくんが正解だねえ」 吹雪はにっこりと頷いた。エドは思わず、「クイズをやってるんじゃないだろう!」と吹雪に詰め寄る。 「なんでそんなものを、あなたがぬいぐるみみたいに持ち歩いているっ!?」 「知らないよーそんなのー」 吹雪は口を尖らせた。 「気付いたら、いたんだもん」 だもん、とかいうな、だもんとか。エドはそんな言葉が頭の中をよぎるのを感じるが、とにかくどこから何をつっこんだらいいのか分からなくて、結局、口にしそこなう。 「おい、十代、しっかりしろってば! 十代っ!」 ヨハンにぺちぺちと頬を叩かれて、十代が、ようやく我に帰る。はっ、と眼を見開いた瞬間、「そうだ、ジムが…!」と勢いよく起き上がって。 やはり、とてもありがちな結果に終わった。 ごつん、という鈍い音。再び倒れる十代とその横に倒れるヨハン。アホは放っておくべきだ、と万丈目は結論付ける。エドと目配せを交し合い、食堂へと飛び込む。停電のせいで薄暗い。 「おい、ジム、いるのか!?」 呼びかけるが返事は無かった。代わりに答えるのは窓の外を轟々と吹き荒れる嵐の音ばかりだ。部屋の中を見回す。もう使われていない、座敷の休憩室である。特別に借り出した人々のためにある休憩所で、上がり框で靴を脱ぎ、畳の上に座ってくつろげるように出来ている。 部屋の一番奥にはテレビがある。背の低いちゃぶだいには、菓子のたぐいが散乱していた。そして、その向こうに…… 手足の長い、長身の男が、倒れている。 「ジム!」 ヨハンよりも先に復活した十代が、がばりと、ゾンビのように起き上がった。「ぎゃっ」と翔が悲鳴を上げるが、それにもかまわず復活し、あわてて座敷に上がりこむ。倒れているジムの横に駆け寄って、「ジム、ジムーっ!」と泣きながら、必死で身体を前後左右に揺さぶる。ガッツンガッツンと音がした。「ちょっと待て先輩、ホントに殺す気か!」とエドがあわててひったくる。 万丈目は、とっさに、部屋の中を見回した。 窓はある…… だが、内側から施錠されている。通気口には網の蓋がついている。そして、ペンキ塗りのドアは施錠されていなかったが、内側からみると、カレンがつけたらしい爪あとや傷がびっしりとついていた。 「十代っ、それ以上動くな!」 思わず、万丈目は叫ぶ。十代の動きが止まった。 エドが十代の隣に行き、ジムのまわりをみる。おそらくペットボトルをひっくりかえしたんだろう。オレンジジュースがこぼれて水たまりを作っていた。そして、伸ばしたジムの指の先が、そのジュースで、何か、文字を残している。エドがそれを読む。 「《J》…と書いてあるように見えるな」 「ダイイングメッセージか」 万丈目がつぶやく。十代がぽかんと口を開けた。 「ダイニングメッセージ?」 「あほう、それじゃ台所だ! 買い物メモじゃない!」 「ダイイングメッセージ…… 死んだ人間が最後に書き残した言葉のこと、だろ?」 ようやく復活したらしいヨハンが、額をおさえ、よろよろと座敷にあがりこんでくる。十代の石頭はそうとうのものだったらしい。正面切ってぶつかりあったせいか、ヨハンは半分涙目になっていた。 「つまり、《Die-ing》って意味だぜ、十代」 「でも、この部屋の窓は、すべて中から施錠されているよ? しかもドアはカレンが内側からふさいでいた」 片腕に《黒龍の雛》を抱いたままの吹雪が言う。「どういうこと?」と翔は言う。 ジムのまぶたをひっくりかえし、手首を持って脈を取り、そして、胸に耳を当てて鼓動を確認したエドが、冷静に言った。 「みんな、彼は死んでない」 「おい十代! お前はなんであんなところにいたんだ?」 エドの言葉を完全に無視して、万丈目は、ビシィ! と十代を指差す。十代は眼を丸くし、それから、「その」と口ごもった。 「おれはジムと…… その…… で、でもとにかく、おれといっしょにいたときは、ジムはなんともなかった! 本当だぜ!? 信じてくれ!」 「ちょっとまってくれっす、アニキ、何やってたんっすか!?」 とぼけた口調で、吹雪が、口を挟んだ。 「痴情のもつれかい?」 「「吹雪さん/師匠は黙っててくださいっす!!」」 ステレオで怒鳴られて、「ひどいなぁ」と首をすくめる。みゃうー、と腕の中で《黒龍の雛》が鳴く。 「と、とにかく、あれだ。これは―――」 万丈目は、集まった皆を見回して、どきっぱりと断言した。 「密室殺人だ!」 「だから、死んでないのに……」 エドが、深い深いため息と共につぶやくが、しかし、やっぱり誰も聞いてはいなかった。 2:玄関 風はいよいよ吼えたけり、雷はひらめき、雨は機関銃の弾のように降り続く。剣山は泥にまみれ、頭からぐしょぬれになりながら、ひたすら、天に向かって吼え続けていた。 「グォォォォオオオン!!」 「ギャオォォォ!!」 「ウォォォオオォン!!」 「グギャァァァァ!!」 木々がばさばさと揺れるところは、まるで、デスメタルバンドの最前列でメタラーの集団がヘッドバンキングをしているようである。枝が飛べば空き缶も飛ぶ。看板も飛べば屋根も飛ぶ。目の前に巨大な枝が降ってきて突き刺さり、紫電が空にかけめぐり、黒雲が轟々と空を渦巻く。剣山はいよいよ絶好調だった。吼える、吼える、吼える。剣山が吼えればワニも吼える。 「アオォォォ…… あ、あれ?」 そこのところで、剣山は、ようやく我にかえった。 隣で自分と同じように絶好調になってる誰かがいる…… と思ってよくよくみると、それはワニだった。黄色い眼のまわりにぱっちりとしたまつげが可愛らしい。カレンだ、と気付いた瞬間、ふいに、カッ、と雷火がひらめき、すさまじい轟音と共に、近くの木へと落雷した。 「あ、危ないッ!!」 剣山はとっさに、カレンの尻尾をひっぱった。身体をのけぞらせて吼えていたカレンはそのまま泥水のなかにばしゃんと倒れる。カレンのいた場所に、折れた枝が何本も飛散してきた。 カレンもさすがにびっくりしたらしい。二人(一人と一匹)は、お互いに抱き合ったままで、豪雨の中、呆然とした。 「お、オレたち、一体何やってたドン……?」 「がう……」 ばちばちばち、と雨が肌に叩きつけてくる。ワニ革を全身に着ているカレンはともかく、剣山はまるで小粒の石でもぶつけられているようだ、と感じる。風も雨もどんどんひどくなっていく。 また、どこかで雷が落ちた。地面をつたってビリビリと震動が響く。剣山は思わず首をひっこめた。 「か、カレン、なんか危ないから、とりあえず中に戻るドン」 「がうう……」 背中におんぶしてあげたほうがいいのか、せめて抱っこするべきか? と剣山は一瞬悩んだが、しかし、ジム以外の人間には、成体近くまで育ったアリゲーターを常時背負ってあるくなんて不可能だ。剣山が後ろから尻尾の辺りを押してやって、カレンを半ば無理やり玄関から中へと押し込む。ばりばりばり、と遠くから、さらに、わけのわからない轟音が聞こえてくる。 とにかく中まで入って、ガラスが割れても安全なようにある程度玄関を離れると、剣山は床に座り込んでバンダナを頭から毟り取った。顔についた泥をこすりとり、ついでに、隣のカレンの顔も拭いてやる。何がなんだか、もう、さっぱりだった。なんで自分がここにいるのか、なんでこんなことになっているのかも、正直、まったくわからない。 「オレ…… さっきまで、万丈目センパイと休憩室にいて、チーターマンやってたザウルス……」 それが、突然頭の中に何かがビリビリ入ってきて、逆上したのだ。 「これってあれザウルス…… 電磁波?」 隣のカレンを見ると、がう、と答える。同意しているような気がした。 「でも、こんなことめったにあることじゃないドン! なんだってこんなことになったザウルス?」 「があう……」 カレンが口を開きかけた瞬間、ふたたび、ドォン、とすごい音が外からした。剣山は思わず頭をひっこめた。 「なんか変な嵐ドン。こんな台風、生まれて初めてザウルス」 いくら嵐だからって、ここまで、雷や雨が、連続して押し寄せてくるものだろうか? だいたい、昨日の天気予報じゃあ、今回の台風は小型で中規模、とか言ってたはずだ。だからこそ、みんなで温泉にいってのんびりしよう、なんていう能天気なプランが立てられた。だが、この温泉施設にみんなでやってきてからというものの、雨も風も、どんどん激しくなっていくばかりである。 「これじゃあ、アカデミアに戻ることも出来ないザウルス。どうすれば…… って、カレン?」 どろだらけの足跡と腹跡を残しながら、カレンが、のそのそと建物の奥へと入っていく。剣山はあわてて追いかける。 「カレン、このままで入ったら、床が汚れるドン」 「ぐあぉうっ」 「ど、どこいくザウルス?」 その横をあわてておいかけていって、剣山は、館内が薄暗いことに気付く。非常灯くらいしかついていないのだ。停電だろうか……? この落雷だったらありえない話ではない。 「そういえばカレン、ジムはどうしたドン」 「あおうっ」 「ううっ、ワニ語はちょっと…… ワニは恐竜さんとは親戚関係が遠すぎるドン……」 だがしかし、この場合、暗い場所をたった一人でうろつくのも不安だった。外は嵐で、館内は暗く、人っ子一人いない。不気味だ。剣山はぶるりと肩を震わせると、歩くカレンの横に並んだ。 「なんかやな予感がするドン。気のせいだったらいいザウルス」 だがしかし、こういう場合の《嫌な予感》があたらないなどいうことは、まずもって、ありえない話だったのだ。 3:休憩室その2 敷いた布団の上に寝かされたジムは、うーん、うーん、となにやらうなされているが、エドの見立てでは、《まずもって命に別状は無い》というところだった。 何か精神的にショックなことでもあって、のびてしまったのだろう。外傷もほとんど(おそらく十代が振り回してそこらへんにぶつけた傷以外は)無い。放っておいてもしばらくすれば眼を醒ますはずだ。もっともエドは専門家ではないから、きちんとした医師に見せたほうがいいのは確かだろうが。 そう思いながら部屋を隔てるふすまを閉めると、隣の部屋で、目の前にお茶を並べた6人が、しかつめらしい顔をしてにらみ合っている。 上座に座っていた万丈目が、まず、重々しく口を開いた。 「今回の密室殺人には、気になる部分が、いくつもある」 「だから、殺人ではないと言っただろうが」 エドは盛大にため息を付き、開いていた場所にどっかりと座り込む。床に座る文化のない国の人間は正座も胡坐も苦手だ。いまいち尻が落ち着かない。 「まずは、ダイイングメッセージの《J》だ」 「……」 これ以上、《死んでない》といっても無駄だ、とエドはとうとう諦める。死んだ魚のような目でジムの寝ている部屋のふすまをみると、誰が貼ったのか、《被害者その一》という紙が貼られていた。 「これは普通に考えると、第一発見者の十代を指していると考えて、間違いないだろう」 「えっ…… お、おれ、何もしてないぜ!?」 「第一発見者を疑うのは、推理の基本だ!」 あわてる十代に、だが、すぐに「ハイ!」と翔が挙手をした。 「よし、丸藤翔。発言を許可する」 「そんなこと言ったって、アニキは部屋の外にいたっす! ジムのことを手にかけてたら、先にカレンの餌食になっちゃってたんじゃあ?」 「それに、お前だって《J》じゃんか、万丈目」 隣でぼりぼりとせんべいを食べていた(ちゃんともう服を着ていた)ヨハンも、そんな風に口を挟む。万丈目はとたんにうろたえた顔になる。 「なんだ、それは! オレには動機もないし、だいたい、オレにはアリバイがある! 剣山がオレと一緒にいたはずだ!」 「じゃあ、その剣山はどこにいるんだよ?」 ヨハンに言われて、うっ、と万丈目は口ごもる。せんべいの最後のひとかけらをポイと口に放り込み、ヨハンは、にやりと笑う。ちょっとでも彼を知っている人間だったら、嫌な予感を覚えずにはいられない笑顔。 「探偵役を独占できると思うなよ。噂は聞いてるぜえ、名探偵万丈目サンダー…… 名うての証拠クラッシャー」 「だっ、誰がそんな失敬なことを言ったんだ!」 万丈目は場を見回すが、翔が、「皆知ってるよ」と言うと、思わず黙らずにはいられない。 「まぁねぇ、ダイイングメッセージを重視するんだったら、ヨハンくんだって《J》だよ。ちゃんと容疑者の資格はある」 ヨハン、のつづりは《Johann》だからね、と吹雪は指で空中に書いてみせる。ヨハンはぶうと頬を膨らませる。吹雪はにっこりと笑う。 「それに、僕だって《J》だよ? ほら、犯人の資格十分」 「吹雪さんのイニシャルは、F・Tじゃないのか?」 首をかしげる十代に、吹雪は、にっこりと言った。 「ほら、『10JOIN』の『J』!」 エドの辛抱が、とうとう、そこで切れた。 ばん、と両手でちゃぶ台を叩くと、湯飲みが軽く飛び上がる。みんなが振り返ったところで、エドは、青い瞳に怒りをこめて、ぐるりと周囲を見回した。 「そんなくだらないごっこ遊びに熱中している場合か、お前ら!」 だいだい、なんなんだ! 「なんで、どいつもこいつも、精霊が実体化しているッ!? そっちのほうがよっぽど異常事態だろう!」 エドにぎろりとにらまれて、それぞれ、膝だの肩だのちゃぶ台の上だの、でくつろいでいた精霊たちが、眼を丸くしたり、首をかしげたりする。 《くり?》《るびー?》《みゅうー…》 「はいはい、怖がらなくってもいいからねぇ。あのお兄さんはカルシウムが足りないんだよー」 「一番の問題はあなただッ!! 普段から精霊が見えてるやつらならともかく、なんであなたはそんなに平然としているッ!?」 ばん! と再びちゃぶ台を叩き、吹雪に向かって怒鳴るエドに、ちゃぶ台で正座をしていたおじゃまイエローが、《キャア! 怖いっ》とよよっと崩れる。そのままちらりと見上げるが、しかし、当然のように万丈目は同情してくれる様子も無かった。 「そういわれてもねー」 吹雪は、ちゃぶ台に頬杖を付きながら、《黒龍の雛》の喉を、カリカリとかいてやる。 「こういう異常事態でさ、身を守ってくれる精霊が一体もいないほうが、逆に怖いもの。レッドアイズは僕にとっちゃフェバリットだからね、まあ、雛じゃ攻撃力は頼りないけど、そばにいてくれるほうがずっと心強いよ」 まあちょっとちみっちゃくなりすぎたけど…… と言い過ぎる吹雪に、誰もが沈黙した。 面白がっているのか、それとも単に冷静になろうと陽気を装っているのか、吹雪の表情だと誰にも分からない。だが、そんな眼のままぐるりと場を見回した吹雪は、「これって異常事態だよね?」と言った。 「ジムが倒れて、精霊が実体化して、この建物は嵐でアカデミアから分断されている。そうして、この状況下で、誰が犯人なのか、何が起ころうとしているのかもわからない。それにね、ここにあつまった面子以外にも、この建物に誰が残されてるかもわからないしね」 冷静にならないとね、と吹雪はにっこりと笑った。 「謎を解くのはただのゲームじゃない。僕たちの身を守るためでもある…… そう思わないかい、エド」 エドは、ため息をかみ殺し、立ち上がった。 「どこ行くんだ、エド?」 十代が心配げに話しかけてくる。その頭の上には羽の生えた毛玉が心配そうにしがみついていた。エドは笑顔にはなれないにしろ、ある程度は声をやわらげて、答える。 「僕は緑茶は苦手なんだ。紅茶を入れてくる」 休憩室を出て、ふすまを締める。すると、沈黙があらわれる。 エドは大きく息を吸い、そして、吐いた。薄暗く、闇の凝ったあたりに、短く呼びかける。 「そこにいるのか」 《はい、主》 隠形しているのだろう…… 姿は見えない。だが、エドにはそこに《彼》がいるということにとっくに気付いていた。エドにとって最強のしもべであり騎士であるもの。鮮血の名を持つ最後のD。 「バカらしいこと極まりない騒ぎだが、念には念を入れないといけなさそうだ。協力してくれるか、Bloo-D?」 《我が主の仰せのままに》 「ありがとう、Bloo-D」 エドはやっと肩から力を抜き、ため息をつく。そして眼を上げる。窓の向こうには、ただ、激しさを増していく嵐ばかりが吼えたけっていた。 【TO BE CONTINUED!!】 【GXメールゲーム!】、とうとうスタートしたしました! 嵐でアカデミア本校から分断されてしまった天然大温泉… そこに閉じ込められた決闘者たち、それと、彼らのパートナーである精霊たちのクエストが、これよりスタートしたします。 なぜ、天然大温泉はアカデミアから分断されているのか? なぜ精霊たちが実体化したのか? そして、ジム・クロコダイル・クックを殺した(暫定)のは誰なのか? プレイヤーとなった精霊、および、そのパートナーの決闘者のみなさんが解くべき謎はこの三つです。 とりあえず、ヒントは文中にたっぷりとちりばめておきました。無論、まだ発端すら見えない謎も存在しております。 協力するのか、しないのか。事件を解くのか、さらに事件を起こすのか。脱出を試みるか、他にも何かやるべきことがあるのか。 今回はNPCは登場しませんでしたが、次回以降ではキーパーソンとなるNPCが次々と登場します。 みなさま、どうぞ、この謎を解いてください。 それでは、次回のシチュエーションノベルで、お会いいたしましょう。 GM:ゆにこ ←back |