砂糖菓子でできたおきさき
むかし昔、あるところに砂糖菓子のだいすきな王様がいて、砂糖菓子でできたおきさきが欲しいとおもいました。そこで国いちばんのパン屋の親方は、それはすてきな砂糖菓子でできた女の子を王様にあげました。
「だが」
と王様はいいました。
「本当に砂糖菓子なのかどうか、見ただけではわからない」
砂糖菓子でできた女の子はいいました。
「わたくしの左腕でしたら、たべてしまってもよろしゅうございます」
そこで、王様と大臣みんなはおきさきさまの左腕をたべました。
まことにけっこうなお味だったので、砂糖菓子でできた女の子はおきさきになり、親方はたくさんの金貨をもらいました。
それからずっと王様と砂糖菓子で出来たおきさきはいっしょにくらしましたが、そのうち、王様はとなりの国にいき、となりの国の王様とけんかをしてきてしまいました。
王様はおこりながらかえってきて、まっすぐに砂糖菓子でできたおきさきにあいに行きました。
「きさきや、わしはとなりの国の王様と、どちらの国のほうがおいしい菓子があるかをきょうそうすることになった。この国で一番うまい菓子はきさきだと思うのだが」
おきさきは答えました。
「わたくしの左足でしたら、たべてしまってもよろしゅうございます」
そこで王様はとなりの国におきさきの左足をもっていき、となりの国の王様とのきょうそうにかちました。けれどとなりの国の王様はおこってしまい、戦争になってしまいました。
そのうちお城にはひとかけらのぱんも肉もなくなってしまい、お城のひとはみんなテーブルやいすを食べなければいけないことになってしまいました。犬も猫も、いやおうがなしにご馳走になって、テーブルに乗っからなければいけません。
王様は砂糖菓子でできたおきさきに言いました。
「きさきや、おまえのようにおいしい砂糖菓子をたべたなら、兵隊はみな強くなって、戦争にかてるだろうに」
砂糖菓子でできたおきさきは答えました。
「わたくしの右足でしたら、たべてしまってもよろしゅうございます」
そこで、お城の人はみんな砂糖菓子でできたおきさきの右足を食べて、またげんきになり、戦争にかちました。となりの国の王様のかぞくは、みんなどれいになりました。
ところが、王様はどれいむすめになったとなりの国の王女がとてもきれいなのをみて、おきさきにしたいとおもいました。どれいむすめは本当は王女だったので、ご婚礼のお祝いがないとおきさきにはならないといいました。けれど、どっちの国のどのお台所ももうからっぽで、ご婚礼のお祝いに食べるごちそうも葡萄酒もありません。
王様はこまって、砂糖菓子でできたおきさきにいいました。
「きさきや、ご婚礼のご馳走がないと、王女はわしのきさきになってくれないというのだが」
砂糖菓子でできたおきさきさまは、王様のことがすきだったので、とてもかなしくおぼしめしました。
けれど、砂糖菓子でできたおきさきはいいました。
「わたくしにはもう右腕がいっぽんしかありませんが、ご婚礼のお祝いのご馳走にはたりるとおもいますわ」
王様はよろこんで、砂糖菓子でできたおきさきをご婚礼のご馳走のテーブルにのせました。
砂糖菓子でできたおきさきはとてもおいしかったので、王様も、あたらしいおきさきも、およばれになったお客様も、みんなしたづつみをうちました。テーブルの下におっこちた右腕は、びんぼうにんがおしょうばんにあずかりました。
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