【モノローグ・オブ・カオス】



【強力】の将 〜二人のガチホモの会話〜

「阿部さん、いいんですか。EVAは始原の女性を意味する名、すなわち、ありとあらゆる女性の中の女性。僕たちガチホモとは最もかけ離れた存在」
「何を言っているんだ、一樹…?」
「え?」
「あれは、男だ。どう見ても男さ。俺には見えるぜ。あの硬い金属の殻の中に存在するいい男の姿が」
「阿部さん……」
「俺には見える! 男性キャラクターに【好きってことさ】といわれたことが最重要最終エピソードであり、巨乳お姉さんキャラ、ツンデレ同級生、そして、至高の萌えキャラとまで呼ばれた女を傍に置いておきながら、その清らかな童貞を己の「最初にして最後の男」にまで護りぬいた真の漢の姿が!」
「阿部さん、まさか、そこまで。そこまで言うということは、中の人の、さらに中の人は女性だということを知りながら…!」
「さあ、野暮なことは言いっこなしだぜ、一樹。俺たちの最後の戦いだ。せいぜい華々しくやろうじゃないか。クソもミソもありったけ混ぜて、俺たちは皆ガチホモの名の下に一つになるのさ」
「そこまで、そこまでのお覚悟が…!」





【技巧】の将 〜己が屍に歌う凱歌〜

「技巧? テクニックだって? ハッ、新参者がデカい口を叩くんじゃねえよ。お前が真の【技巧】の何を知っているッ。真の【技巧】とはなんなのか、ファミリーコンピューターのパッドを握りすぎて血豆のつぶれた指から学んだとでも言うのか!? 笑わせるんじゃねえ!
 真の【技巧】とはッ! たとえ永遠とも思えるほどのtktkタイムを経たとしても、決して諦めない心の果てにのみ勝ち取られるものッ! 数え切れないほどの己の屍を積み上げた向こうに這い上がるゴールのことッ!
 たとえセコムがそのテクニックの限りを尽くして護りぬいた無理ゲーの果てであっても勝利を掴みぬこうというその飽くなき挑戦、その彼方にたどり着く至高の境地、【友人マリオ】の名ッ!
 たったのボタン二つに方向コントロールキーのみにまで単純化されたドットゲームを、わざわざプログラム言語を駆使してまでクリアしてのけようとする壮大なる労力の無駄遣い、その果てにのみ生まれる芸術をも超えた巧みの技ッ! プログラムの作り出す水も漏らさぬ網の中をッ! 【TAS】の名の下に駆け抜ける究極の【全自動マリオ】のことッ!
 たとえ発売元からクレームを付けられようが、動画を削除されようがッ!
 ……たとえ動画が消えようと、俺たちの記憶は消えねえ…
 無数のマリオたちの屍の果てに築かれた真の【技巧】の意味を、ここで教えてやるぜッ!」





【知略】の将 〜歌を忘れた○○○○の歌〜
「うふふ… とうとうカナの時代がやってきたかしらぁ!
 雌伏の時はもう何年…… アニメ一期だと存在すら忘れられ、あげくのはてに本編でもネタキャラ扱い。カナのことを萌えキャラとして公式に扱ってくれたのはドラマCDのみ。そこでも【カナブン】だの【カナガワ】だの【カナザワ】だの、頭に【カナ】とさえつけばカナのことだって言うくらいのネタキャラ扱い……
 でも、でもッ! 最後に笑うのはカナなのかしら! これこそが、カナの仕掛けた究極にして最大の知略の罠ッ!
 ニコニコ動画においては「限りなく希薄な存在感」というものは、時に逆転して最大の属性と化す。空気だのエアだのと呼ばれた数々の存在をカナは知っているのかしら! 本編だとカッコいい見せ場が少ないということは、逆転してニコ厨たちの愛を勝ち得る最大の切り札となりうるッ!
 かつて【見えるけど見えないもの】、【この動画何も写って無いぞ】と言われ付けた一人の男がいる…… でも彼はとうとうゲーム版での独立シナリオをも勝ち取ったのかしら。その、【見えるけれど見えない】という虚無のエネルギー、すなわち、【存在感ゼロ】という最大の武器によってッ!
 この瞬間…… カナはとうとう水銀燈にすら勝ったのかしら…… 他の姉妹たちは言うまでも無い。人気で最も勝っていたあの子も、主役格のあの子も登場できなかったこの作品で、カナは一将の名をも勝ち取ったのかしら。
 みっちゃん、見てる? きれいなドット絵でしょう。お父様、カナのことを作ってくれてありがとう。カナは今、最大の見せ場を迎えたのだわ。
 さあ、知略の限りを尽くして、今こそッ! 美味しいところだけいただきするのだわ!!」





 ラスボス 〜支配者のモノローグ〜
「レナ、聞こえるかしら? CCO、分かるかしら?
 きいてちょうだい。どうせ、これは他の765プロのみんなには聞かせられないメッセージ。何の価値も無い、ただの私の独り言よ。
 みんなは覚えているかしら。私はかつて、ただの【アイドル】だった。何のとりえも無い平凡なアイドル。そんな言葉、矛盾しているとしか言いようが無いわね。その通りよ。私は黒い白馬。私の道はまさしく馬から落ちて落馬したとでもしか評することの出来ないろくでもない道だったわ。
 歌がうまくないからせめて【馬】くして見ましたなどと言われてウマの気ぐるみを着せられ、中の人の歌唱力の低さから、そしてCGの出来の悪さから【のワの】の別名を与えられた。そんな私に居場所なんて無かったわ。アーケードの通信世界の中で、私は誰でもなかった。ただのモブ、興味を引かない攻略対象のひとり… ふふ。笑いなさい。閣下と呼ばれる今の私には相応しくない言葉だもの。
 けれど、このニコニコにたどり着いて、私は変わった……
 本気で訴えても、媚びても、得られないものが【人気】であるというのなら、絶対の恐怖を持って奪い取ればいい。さもなくば、徹底した空耳の嵐で、ヤンデレ化によるキャラ立ちの果てに、あたらしい存在感を確立すればいい。そうして、私はそうしたわ。その果てにたどり着いたの。今、私が立っている場所。輝きに満ちたステージへと。
 洗脳し、搾取し、服従だけを求める。あまたのプロデューサーさんたちをこの足の下に踏みつけにして、求めるものはただ隷属、そして、犬にも劣る愚劣なる忠誠。
 この邪悪な血の色に彩られた私を【アイドルではない】【一般受けがない】と笑うなら笑いなさい。けれど、今の私はただのニコニコにおける一キャラクタの枠を乗り越えた。オフィシャルでも私の歌うようなドSソング、禍々しいリミックスが作られるようになり、とうとう衣装でまで私専用としか思えないものまでが配布されるようになった。
 ―――いいのよ。カオスの果てに歪み果てた女の末路と、笑うならば笑いなさい。
 けれど、私の居場所はここ。カオスの渦巻くニコニコ動画の、無数の紳士たちがwktkしながら待ち構える亡者と餓鬼の巷。
 誰であっても私の足元に跪かないものなどいない。なぜなら、それが私の存在意義なのだから。
 私が求めるものッ!
 それは【春香は俺の嫁】の一言ではなく、日本語として成立してすらいない【orzorzorz】の弾幕のみッ!
 【春香かわいいよ春香】よりも私は、【閣下、今日もうつくしゅうございます】の賛辞を選ぶッ!
 三千世界に遍く存在するすべての動画にカオスよあれ! 私は選ぶッ! 私は寿ぐッ! どれほどのカオスの削除と再うpの泥沼に沈もうとも、ニコニコ動画の栄光こそ永遠に輝いてあれとッ!
 あなたたちは皆、私の輩。私の家族たちよ。すべてのネタ動画の人々よ。すべての自重しないうp主たち、【ま た お ま え か】のタグ、そして【うp主は病気】のタグを燦然と頭上に輝かせる変態という名の紳士たちよ。
 霊夢、誰も分からなくともあなたならば聞いてくれるはず。
 このカオスの海でゆっくりしすぎた結果がこんなことになってしまっても、ニコニコRPGへと迎え入れられて、あなたは喜んでいるはずなのだから。証拠にあなたは、こんなにもゆっくりとしているのだから。

 さあ、おもむきましょう。最後の戦いへと。
 そして私たちすべての、決して終わることの無い、カオスの円舞曲の、美しい一幕へと……」








まぁ…うんなんだ、ごめんなさい。




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