無要




たとえば
子どもなどが訪れるはずもない、
さびれた街の土産物屋のかたすみで、
埃にまみれながら、ぬいぐるみの熊が、
プラスティックの目を見開きつづけている。
閉じることのない目を。



たとえば、
ビルに挟まれた狭い路地の谷間で、
羽虫にたかられた一鉢のポインセチアが、
病んで縮れた葉を落とす。
縮れて、紙のように枯れた葉を。



たとえば、
住人も消えた古いアパートの一室で、
ちいさな空の冷蔵庫が、
壊れたモーターのつぶやきを、
つぶやきつづけている。
蜂の羽音のようなうなりを。



プラスティックの目が、
枯れ落ちる葉が、
壊れたモーターのうなりが、

つぶやく、





誰にも望まれず、望まず、
生きていくことは、こんなにも難しいと。



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