コップ







 私の中にあふれそうなコップがある
 水はもりあがり、ふるえ、いまにもこぼれそうで、

 事実、それはこぼれるのだ
 かなしみのとき 孤独のとき
そして、ただ不安のときに

 私はときおり試みる
 コップの腹に穴を開け、すべての水を逃がそうと

 けれど、ビーズのように盛り上がったつぶてをみながら、私は、別の事を思う
 誰の中にもコップはあるのだ 
 そうして、それはときおりあふれるだろう
 
 雨のとき、ふるえるとき、そして、あふれるべきときに

 そうして私はコップを心のどこかに閉まっておく
 あふれるべきときにはあふれるのだろう

 飲み干す時がいつかおとずれるのかを私は知らない



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