暗い、闇の底で。
城の立案室で戦術図を広げていたデューク・アリババ、バンパイア・フッドは、扉のきしむ音に、顔を上げる。
「バンプ・ピーター?」
そこに立っていたのは、炎の髪を持つ乙女。
バンパイア・フッドはやや眉を寄せる。彼女はたしか天使たちとの戦いで深手を負い、今は治療に専念していたはずだ。事実、顔色が良くない。身に付けているものも甲冑ではなく、シンプルな白い服だった。
「部屋にいろといっただろう」
「……デューク・アリババ。次の戦はどこなの」
彼の言葉にも答えず、乙女は、静かにそう言った。デューク・アリババは短く答えた。
「まだお前は出せない」
「関係ない。戦いたいの」
乙女は笑う――― 獰猛で、凄艶な笑み。
「あと、残っているのは、ヤマト、ダンジャック、それに牛若……」
くすくすと笑う。ひどく可笑しそうに。そこに狂気に近いものを感じて、バンパイア・フッドはわずかに不審の色を見せる。だが、デューク・アリババは何の表情の変化も見せなかった。静かに乙女の言葉の次を待つ。
「早く、みんな殺したい。そして、このゲームを終わりにするの」
意味の通じない言葉。どこかしら熱に浮かされたような表情。泣いていたのだろうか? バンパイア・フッドはかすかに不審に思い、そんなはずは無い、とすぐに打ち消す。彼女の身体は泣くという機能を持たない。どれほど哀しもうと、傷つこうと、流すための一滴の血、一滴の涙すら、彼女の身体には残されていない。
傷が痛むのか、こちらへと歩んでこようとしたバンプ・ピーターがよろめいた。その身体を支えたのは、デューク・アリババだった。
「アリババ……」
魔界君主たる男の腕に抱かれ、乙女は、静かに腕を伸ばす。まるで姉が弟を抱くように…… あるいは、妹が兄にすがるように。
アリババはここにいる。大丈夫。あたしたちは、もう、ずっと一緒。
それは偽り。それは幻。
けれど、信じるものは、他に無い。
「みんな、ずっと一緒だよね?」
「……そうだな」
デューク・アリババは静かに答え、乙女の身体をそっと抱く。その身体の確かな感触を確かめるように、バンプ・ピーターは腕に力を込める。
残されたものは、幻影と狂気。
灰の乙女は、幻と知りながら、はかない未来を想い――― そっと、瞳を閉じた。
『 この世は所詮 楽園の代用品でしかないのよ 罪深きものはすべて 等しく灰に還るがいい 』( ”Sacrifice” By Sound
Horizon )
とりあえず…… ごめんなさい……(吐血)
話的には『神様』の続き。BMを知らない知り合いS嬢に、BMのSSを書くのは難しいーという話をしていて、ピーターという子がこれこれこうでねーという話をしているうちに思いついた話。
自分的にパンゲは分岐点、というか、このままジオに進むのではなく、何かするとSBMの方に進むんじゃないかという風に考えているのですが、それを前提に動いていると、そもそもバンプの存在意義って何? という話。
生まれ変わるごとに彼らはいちおう別人になるわけですし、そう考えないと、一回一回の人生(ヒトじゃないけど)があまりにむなしい。でも、もしも『今、ここにいる自分』をそのままに受け入れてしまうと、自分の犯した罪の重さからは逃れ得ない哀しいパンゲ編。
未来を知らないがゆえに決断を下せるフッド、同じ定めを何度も繰り返してきたデュークと違い、初めてこういった事態に直面したのがバンプなのかも。
「みんなで一緒にいたい」と願いながら仲間を屠っていく彼女は、なんていうか、すでに狂気にあるのかもしれない。けれど、それは『未来』のために『現在』を捨てた者に対する報いに他ならない。
「みんなで、いっしょに、しあわせに」
たったそれだけに願いすらかなえられない、哀れな灰の乙女のお話。
……ところで、エンパイア×バンプは普通にノーマルCPですよね?(笑)
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