【GXメールゲーム!】
TUAN-2 純・粋・推・理!



 

 3:建物内探索 《十代・吹雪》


 外ではなおも嵐がうずまき、青白い光がひらめけば、轟音が響き渡る。不安げによりそってくるハネクリボーの羽毛をぽんぽんと撫でて、「大丈夫だぜ」と十代は笑った。
「何怖がってんだよ。吹雪さんも一緒だし、レッドアイズもいるし。今回はあんまりたいしたことなさそうだし… って」
 可愛い”相棒"相手に話しかけている十代は、ふと、横をあるいていた吹雪の、うらやましそうな視線に気付く。「なんだよ?」と眼をまたたく十代に、吹雪は、そのやりとりを見ていたことに、やっと気付いたらしい。
「ああ、いや、仲がいいなぁと思ってね」
「もちろんだぜ!」
 自信満々に答える十代の横で、ハネクリボーも、《くりっ》と小さな手をあげる。ハイタッチ。つくづく、可愛らしい。吹雪はうらやましそうにため息をついた。
「いいなあ、十代くんってずっとこうだったのか。万丈目くんも……」
「んー? 精霊が見えるってこと?」
「そうだよ!」
 僕のレッドアイズだって、こんなにかわいいのに!
「ああ…… ずっと精霊が見えるままだったらいいのに……!」
《みゅぎゅう〜!》
「吹雪さん、雛、絞まってる!」
「あ、ああ、ごめんごめん」
 おもわず力いっぱい抱きしめてしまっていた《黒龍の雛》から、吹雪はあわてて手を離す。ようやく開放された雛は不満そうにポッと火を吹いた。やっぱり、黒っぽい感じの紫色の火だった。
「吹雪さんって、精霊、見えない……?」
「そうだよ〜。ううん、なんか例外もあった気がするけど、よく憶えていないし。そもそもこうやって十代くんとのんびり並んで歩ける状況で、ってのはやっぱり初めてって気がするんだよ」
「のんびりって状況かあ?」
 ジムはぶったおれてるし、外は謎の大嵐だし、別に、まったく安全ってわけじゃあないと思うのだが。十代は首をひねるが、「そうだよ」と自信満々に断言されて、簡単に押し切られる。
「じゃあ、そうなのかなあ。確かにいきなりヘンなデュエル! 闇のゲーム! とかいってくるやつもいないしな」
「そうそう」
 吹雪は片手に雛をかかえたまま、もう片手で器用にあちこちを懐中電灯で照らし出す。最初のうちは部屋の中を確認するたびに警戒していた二人だったが、どこを見ても人っ子一人いない、となるとさすがに警戒心もうすれてくる。誰もいない建物に不気味さや緊張感を抱く、という流れが普通のシチュエーションだったかもしれないが、しかし、組み合わせが組み合わせだった。基本的にはどんな危険が目の前でも自分のペースを崩さない十代と、マイペースさだと十代以上と言えるかもしれない吹雪。二人で雑談などをしながら歩き回っていれば、恐怖心にかられて不安になれ、というほうがムリというものだ。
 ドアを開けて中を覗き込む。男子トイレの中は無人で、遠くで水が流れる音が聞こえるだけ。吹雪はみゅうみゅうと騒ぐ雛を小脇に抱えながら、懐中電灯を廊下のほうへと向けなおす。
「でも、なんでこんなことになったんだろうねえ? 十代くんはどう思う」
「どう思うとか言われたって…… ぜんぜん分からないぜ」
「ジムのことはどう思う?」
 十代の表情が、はじめて、曇った。
「……どうしちまったんだろう。すごく、心配だ」
 頭の上に乗っかったハネクリボーが、心配げな顔をして、ぽんぽんと十代の頭をたたく。そんな十代は、吹雪が一瞬だが、見定めるように眼を細めたことに気付かない。
(嘘は…… ついていないかな)
 真面目に見定めて、正面からしっかりと問い詰めてみないと、確証は持てない。だが、十代がジムのことを心配しているのは、本当であるように思えた。
(そもそも十代くんは、決闘中以外は、そんなに嘘が上手いってタイプでもないし)
 みゅう? と腕の中の雛が首をかしげる。吹雪はすっとさりげなく前に踏み出して、十代がそれをいぶかしがることがないよう、雛の姿を視界から隠した。
 単に眼を回しているだけだ、とエドが断言するまで、十代は事実取り乱している様子だった。密室でいきなりジムが倒れた、ということに驚き、混乱していたのは事実だったのだろう。そのことについては十代を問い詰めなければ分からないが、けれど、今は館内を探索するほうが先決だと決めた。雛がみゅうみゅう言ってそうしたがってるようだったからそう決めた。
(僕も、いいかげん、精霊に甘いね)
 まあ、ドラゴン使いはたいていそうだ。吹雪はあっさりと自分の葛藤を投げ捨てた。
「亮がいたら嬉しがりそうだけどねえ、こういう状況」
「カイザーが? なんで?」
「サイドラを腕に抱っこして撫でたい放題」
「あー、なるほど」
 抱っこできるサイズかどうか、のほうがそもそも問題だけどなあ、と吹雪は頭の中だけで付け加える。しかし、ちょっと首をかしげた十代は、「でも、その後に即デュエルじゃないか?」と言った。吹雪は思わず苦笑してしまう。
「そのとおりだねぇ」
「ほら、ちゃんと触れる、話もできるサイドラで、エザレーション・リザルト・バーストぉ!」
「グォレンダァ?」
「それそれ!!」
 吹雪は思わず、「ぷっ」と吹き出してしまう。十代は首をかしげた。笑いどころなのに…… いや、まあ、こんなところで親友の株を無駄にさげることもあるまい。
 そんな話をしていた十代が、ふいに、「あ!」と声を上げた。吹雪は必死で笑いをこらえながら、「なんだい」と答える。
「なんか昔、おなじようなこと、あった気がする?」
「おなじようなこと?」
「えっと、ドラゴンの精霊が出てきて、融合して、玉砕、粉砕、大喝采……?」
 なんだそれは?
 吹雪が、そんなことを言いかけたときだった。
《くりっ!》《みゅう!》
 二人の頭の上、腕の中にいた精霊が、それぞれに声をあげて、騒ぎ出す。なんなんだいったい? 「おいおい、相棒?」と十代は慌てて頭の上のハネクリボーを手で押さえた。
「なんか出たか!?」
《くりくり〜!》
《みゅー! みゅうー!!》
 かっ、と光が奔る…… 目の前は階段。吹雪がとっさに懐中電灯で照らすと、展望室、とプレートに書かれていた。高いところから景色を見下ろし、椅子に座って休憩することのできるスペースだ。もっとも、こんな大嵐の中では、居心地がいいとは思えない。二人は顔を見合わせた。がしゃん、と音を立てて、腕に装着していたディスクが開いたのは、ほぼ同時だった。
「いくよ、気をつけて」
「ああ、吹雪さんも」
 二人は、お互いに走り出し、並べるほどの広さの階段を駆け上がる。雷がひらめき、薄暗い非常灯よりもなお明るく、階段を青白く照らしだす。二人は展望室へと飛び込み、左右へとお互いに立ちはだかった。油断なく見回す。ガラスの窓をはげしく雨つぶてが打つ展望室。
 だが、そこに置かれた大きなチェアの上に、悄然と座り込んでいる姿を見つけた瞬間、二人はそれぞれ、呆然と、あるいは唖然と、口や眼を丸くする。
 長い髪。振り返る。その横顔が、雷のひらめきに照らされる。ちょっとおどろいたように眼を開いてみせる、その横顔は。
「明日香!?」
 吹雪は思わず声を上げ、チェアのほうへと駆け寄った。
 長椅子に座っていた明日香は、おびえたように眼を見開き、「あ……」と小さく声を上げた。いつものブルー制服ではなく、あまり見覚えのない、白っぽいワンピースを着ている…… 吹雪があわてて明日香の肩を掴んだころになって、十代もようやく我に返った。
「明日香! どうしたんだ、なんでこんなところに?」
「あ…… あの……」
 眼をそらす。困惑の表情。何かがおかしい。吹雪は、口をひらきかけた。だが、明日香は救いを求めるような眼をさまよわせ、吹雪の肩にしがみついていた雛を見つけ、ようやく、わずかに体の緊張を解いた。
「レッドアイズ…… ここにいたの」
「明日香……? どうしたんだ、いったい?」
「ごめんなさい、おどろかせてしまって」
 吹雪を見、それから十代を見て、明日香はしょんぼりと肩を落とす。
「驚かせるつもりじゃなかったんです。ただ私、ここに、隠れていたの」
「隠れて、だって?」
 眼を上げた明日香は、二人を見る。うったえかけるような目がどことなく悲痛だった。吹雪は思わず怯んだ。何かおかしい。どうして明日香が、こんな、しおらしい顔をしているんだ?
 何があったんだ、と吹雪がふたたび言いかけたとき、吹雪の後ろでためらっていた十代が、「その、吹雪さん」と困惑したような声で言う。
「その人、ほんとに、明日香なのか?」
 どういう意味だ!?
 とっさに振り返る吹雪の手を、しかし、明日香の白い手がぎゅっと掴んだ。「おねがいです」と半ば悲鳴のような声。
「おねがいです、私、まだここに隠れていたいんです。誰にも言わないで……!」

 いったい、どういうことだ?

 上目づかいにうったえかけるような目に、不覚にもどきりとする。うっかり明日香と見詰め合ってしまう。なんだか妙な感じになってしまって、吹雪は思わず硬直した。
 かっ、と再び空が光った。青白い光が、薄暗い展望室を、照らし出す。





《その2》

【TO BE CONTINUED!!】





今回の追記です!
ヨハンの行動はPLさんからの宣言がなく、また、翔PLさんから「ヨハンに対してデュエルを宣言する」という行動宣言がありましたので、そちらに従わせてもらいました。
ちなみにヨハンと翔のデュエル結果は、手持ちの10面ダイスを振って、値の高かったほうを勝ちとしてあつかっています。…大雑把な判定方法ですが、まあ、勘弁してください(苦笑
あと、もしもPLさんが多忙などで行動宣言ができないときは、拍手などでその旨をひとこと言っていただけると嬉しいです〜。よろしくおねがいします。

今回はバッドステータスが発生しているキャラが複数いたので、説明いたします〜。
バッドステータス(状態異常)は、PC・NPC共に何種類か存在しております。そして、たぶん今後頻出すると思われるバッドステータスは、以下の二種類です。

 【\(^o^)/】:オワタ状態
要するに戦闘不能状態です。命に別状はありませんが、この状態になってしまったキャラクターは、《被害者》にカウントされてしまっても文句をいえません。
致命的なダメージを受けて、戦闘不能になったとき、この状態になります。ちゃんとした技能を使って手当てをするか、1ターン経過すると、元に戻ります。また、【とあるアイテム】を使うことによって、他人をこの状態にすることもできます。

 【弱点発動】:弱点状態
そのキャラクターそれぞれの【弱点】が前に出てしまっている状態を指します。この状態になっているキャラクターは、それぞれ自分の弱点にあたることで頭がいっぱいになってしまっているため、行動がちょっとヘンになります。
【弱点】は人それぞれなので、キャラクターによってどうなるかも異なります。たとえば翔の場合、【臆病】が発動すると、ひどい場合は机の下にもぐりこんでしまって言うことを聞かなくなったりします。

キャラクターのバッドステータスはそれぞれのPLさんにだけ報告する予定ですが、読者さんも分かったほうが面白いでしょうかね?
ちなみに現時点のバッドステータスは、NPCの場合、以下の通りです。

ジム:【\(^o^)/】
オブライエン:不明
明日香:不明

しかし、今回はながくなったな…orz
次回もっと長くなったらどうしよう(苦笑) とにかく、次回またお会いしましょう!

GM:ゆにこ


 
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