18



 いったいどこで間違えたんだ? 何がいけなかったんだ?

 あの世界のリアリティの精度に斑があるということ、それは、仕方のないことだ。あの世界の成り立ちを考えると許容せざるを得ないエラー。けれど、今まではそれが致命的な結果をもたらすことなんて無かった。『彼女』だってそれを容認していたはずだ。

 リアリティの精度に疑いを抱くということは、つまり、『別のレベルのリアリティ』を『真正のもの』と認識するということ。
 
 ようするに、『現実』を何らかの形で思い出したということ?

 その原因となりうるものはたった一つしかない。あの忌々しいレンズ。マインド・ミラーという名の、ちっぽけなスノウ・ドーム。

 あれさえなければ、この世界には寸暇もない。崩壊の糸口すら無かったはずなのに。

 でも、もう、手遅れだ。

 『彼女』はもう、気づき始めてしまっている。

 ……うん。

 それでも、おれは最後まで努力し続ける。『彼女』の幸せのために。それがおれの存在理由。それに、お前の存在理由でもあるはずだ。

 ―――だから、お前は、決して『彼女』を逃がすんじゃない。
 
 絶対にこれ以上『気づかせて』はいけない。

 分かったな?

 分かった。
 ぼくも、精一杯、がんばるから……







BACK NEXT
TOP